後ろから突き飛ばされたと思った。けれどもつんのめって、雪の上に倒れたらもう起き上がれなかった。背中が錐を差し込まれているように痛い。拍動に合わせて痛みが大きくなる。撃たれたのだ、背中から。でもどうして? と思うピョートルの横でスコップが雪に突き立てられて穴が掘られて行く。
頭の上で誰かが会話している。言葉は分からなかったが自分の処分の話だろう。それとも全く関係のない話なのか? ちくしょう、とピョートルは思う。撃ったのはどっちだ。ツルミか? ツキシマか? きっとツキシマの方だ。彼は手足だ。頑丈な手足で、ツルミが頭だ。そういう二人組だった。帝国の東端のまだ東の先から来たこの東洋人二人と、ピョートルはしばらく行動を共にしていた。自分の人脈や、事情通なところを見込んでのことらしい。彼らはただの旅行者ではなかった。地下の情報を求めていた。だから案内してやった。彼らならば、自分が故郷でやれなかったことをできると思った。
それなのに、どうして? 雪を掘る音が止んだ時、ピョートルの視界はほとんど真っ暗になっていた。穴に蹴り込まれ、血のついた雪を、その次に真っ白な雪を、体の上に落とされる。それでもまだ彼は自分の間違いに気づかなかった。革命詐欺師ではなく、本物の革命家になろうとしたのが彼の間違いだった。
雪は少しずつ彼の体を、髪を、顔を隠して行く。寒い、と思った。死が訪れるまでの永遠の一瞬間、彼の心を覆い尽くしたのは、その一言だった。