自炊は好きです。
まっとうりは小さめでも重いのがいい、というのであっちとこっちで重さを比べていたけれど、突然面倒になって一番上のを掴んでカゴに落としました。針の麺からはかない音がします。砕けたかもしれませんが、まあいいやという気分です。
まっとうりと言えば煮物ですが、私は細く切って辛味素材とあえるのがお気に入りです。邪道でもなんでもどうぞ。瓶で買ったから使い切らないと。
必要なものは買ったのに、まだしつこく店内を巡回しています。何か忘れものがあった気がして、だけどこれは単に物足りないだけでしょう。新しい調味料を増やしてしまう前に、手近にあった小さなお菓子を一番上に置いて、さあ、帰りましょう。
お店の外に出ると、日は落ちて空の上の方はもう深色です。屋根の上にわずかに残った薄い光が花開く宇宙ステーションの輪郭を照らします。宇宙ステーションは伸びざかり。私が子供の頃からずっと伸びざかりでした。今は花の季節だそうで、地上からは見えませんが、映像が配信されていていつでも見ることができます。
時々、私のいる世界はこんなだっただろうかと思います。本当にこんなだっただろうか、本当に宇宙ステーションは茎を伸ばして花開くもので、まっとうりは煮物に最適だったろうか、と。少しずつ世界が入れ替わっていて、それに私は気づかないだけなんじゃないだろうか。
とか言って。
時々、本当に感じるのは足元が消えたみたいな不安定さだ。そういう時、自分で自分に、頭の中でうるさく話しかけてしまうのも小さな頃から変わらない。もう気が済んだだろう。さあ、帰ってご飯にしましょう。
まっとうりは皮を剥いて子鞘を取り、薄く切ってあえものにします。針の麺は味噌汁の具に。買い置きのお芋と肉で、昨日見つけたレシピの甘辛炒めを作ろうと思っていたのにしゃばしゃばのソースがありません。そうだった。これを買いに行ったのに、まっとうりに気を取られてすっかり忘れていました。仕方がない。ソースは無視。代わりに味噌でも入れとこう。ちょうど味噌汁のために出しておいたのがあります。ついでに傷みかけていたとげびきねぎを一緒に炒めます。
ご飯はおいしくできました。ついおかわりをしてしまいます。自炊は好きです。だけどレシピを平気で無視するから、レシピを作った人が食べさせたかった味はこれではなかったのだろうと思います。